顧客から支払いを受けるということは、1回限りの行為ではありません。競争力を保つためには、不正行為が起こらないように対策を取りつつ、顧客体験を向上させる方法にも常に気を配らなければなりません。
しかし、利用している決済サービス プロバイダー1社のサービスだけでは不十分な場合もあります。進出先の国によっては、支払いを受けられない可能性があります。
それでも、古い決済サービス プロバイダーの利用を段階的に中止し、新しいプロバイダーをオンボーディングするというのは頭の痛いことかもしれません。でもご安心ください。1社だけを選ぶ必要はありません。2社利用してもかまいません。3社以上のPSPと連携することで、収益が再び上向く可能性さえあります。
アクワイアラーに依存しない決済ゲートウェイを導入すると、支払いが最適な決済処理機関に自動で振り分けられます。これにより、チェックアウト時の不要な支払いエラー(防げるはずの決済失敗)を減らし、スムーズな取引を実現できます。
複数のPSPを採用することで多くのメリットが実現可能です。本稿では、複数のPSPの採用に伴うコストとメリットをさまざまな角度から見ていきます。
決済サービス プロバイダーの追加を検討する理由
ビジネスにPSPをもう1社追加するということは、レースに馬をもう1頭加えるということです。自社のデジタルコマースに、どちらがより優れたパフォーマンスを発揮するのか、見極めることができるのです。つまり、決済プロセッサAとBのどちらが決済が早いのかテストできることになります。
なぜそうなるのでしょうか?決済プロセッサはどれもほぼ同じように機能します。ところが、プロバイダーによって提供するツールやサービスの質に本質的な違いがあると聞けば驚かれるかもしれません。
決済サービス プロバイダーの違いとして、以下が考えられます。
従業員の経費カードを作成するなど、高い決済機能
カードスキーム(Visa、Mastercard、Diners Clubなど)との良好な関係
現地の決済の規制およびカードスキームの要件に関する確かな知識
継続的な改善のため膨大なデータセットと機械学習を駆使している優れた決済ルーティング技術
3DSやトークン化決済などによる決済セキュリティの強化
追加のレポートツールとカスタム分析
質の高い不正防止対策とリスク評価エンジン
さらに詳しく:支払方法――直接統合とPSPの比較
複数の決済サービス プロバイダーを利用するメリット
ビジネスにPSPを追加する主なメリットは2つです。
取引を最も効果的な決済プロセッサにルーティングすること
コストを削減すること
1つ目のメリットは、支払いの成功率を上げるために最も重要と言えます。複数のPSPを採用すれば、承認率、すなわち試行された支払いのうち、貴社に資金をもたらす結果になる支払いの割合が向上する可能性があります。
どうしてそうなるのでしょうか?Checkout.comは、データのコード化、適用可能なセキュリティ対策、利用可能なルーティングオプションに基づき、高度なアルゴリズムを使って支払いの成功確率を計算しています。
つまり、取引を最も安価な経路に誘導することで、決済処理費を削減することができるのです。ただ、全てのPSPにこうした柔軟性があるわけではありません。ベンダーによっては、自社の利益率を健全に保つために、貴社の決済管理オプションを制限したがる場合があります。
上記のほかにも、複数のPSPを採用することで実現可能な大きなメリットを以下にまとめます。
コストの削減:各PSPの中からより有利な処理手数料を利用するか、よりコストが高いプロセッサを経由して取引件数をルーティングするか、選択します。
より良い顧客体験:代替決済手段や後払い決済(BNPL)など、より多くの支払方法を顧客に提供して、顧客満足度を高め、リピート客を増やします。
クロスボーダー決済:PSPはそれぞれの国で支払いを受けるライセンスが個別に必要なため、複数のプロバイダーと提携することで国際的な販売が可能になります。
収益の拡大:顧客には、より幅広い決済オプションがあるため、カート放棄が減少します。
耐久力:プロセッサの停止による収益の損失や、業務内容への懸念による取引ブロックの決定から保護します。
決済拒否の削減:PSPごとに承認率を測定し、貴社のビジネスに最適な結果をもたらすPSPへの投資を強化することができます。
視野の拡大:複数のPSPのアカウントマネージャーから戦略的なサポートを受けます。それにより、決済に関する幅広い専門知識と決済テックのセットアップに関するセカンド/サードオピニオンを得ることができます。
パートナーシップの最適化:さまざまなPSPを試してみて、自社の特定の市場でどのPSPがより速いか、あるいは信頼できるか、知ることができます。これにより、もともと採用していたPSPを使いたいのか、それとも市場でもっと効果的なソリューションを利用できるのか、判断することができます。
さらに詳しく:モジュール式決済インフラの構築
複数のPSPを使用するデメリット
多くの企業が、「壊れていないものを直すな(余計なことはするな)」という考えの下で運営しており、これには特定の利点があります。レベニューオペレーションに複雑性の追加を検討するのであれば、引き金となる正当な理由が必要となります。複数の決済パートナーをオンボーディングする時間と労力に見合った利益を生み出せるかどうか、慎重に検討することが重要です。
以下に、複数の決済サービス プロバイダーを採用する潜在的デメリットをいくつか紹介します。
データの不一致:各PSPはそれぞれ異なる方法でデータをレポートするため、それを組み合わせるのは困難です。
複雑性:複数のPSPと新たに関係を構築しなければならず、個別に時間、労力、交渉が必要となります。
タイムラグ:新規のPSPを評価し、自社の販売エコシステムに統合するには時間がかかります。新しい決済システムをテストし、バグを修正し、顧客ベースに変更を通知するために必要な時間を計算に入れる必要があります。
コンプライアンス:決済統合を新たに追加するということは、貴社のPCIコンプライアンスを新たな水準に引き上げる必要があるということになります。
複数のPSPを利用すべき企業は?
社内にペイメントマネージャーを導入し、決済戦略の最適化に注力している企業は、複数のPSPを利用するアプローチが奏功すると考えられます。より多くの取引データを入手して、推移を比較・分析することができるからです。決済の最適化(不正行為の削減、チャージバック、カート放棄のいずれを問わない)を通じて収益力を強化すると決意しているのであれば、まず複数のPSPを調査してみると良いでしょう。
もう1つのユースケースは、さまざまな支払方法を希望するB2BやB2Cのクライアントに対応している場合です。つまり、中東や北アフリカ、パキスタンなどのグローバル市場で事業展開しており、決済戦略をローカライズする必要がある場合です。
異なるPSPを使う場合、高精度のレポート、処理のスピード、加盟店のサポート、不正行為監視機能など、どのような機能が可能なのか把握する必要があります。
以下では、複数の決済ゲートウェイを管理する方法を詳しくみていきます。
さらに詳しく:PSPのテストと比較
複数の決済ゲートウェイを管理する方法
新しい決済ゲートウェイの接続体験はプロバイダーごとに異なり、必要な労力も特定の目標や既存の技術的セットアップによって変わります。
通常、それぞれの新しい決済ゲートウェイを技術スタックに1つずつ実装する必要があります。リソースの強度は、決済体験の好みによって変わる可能性があります。
ホスティング型決済ページの追加=比較的少ない労力
SDKによる統合=少~中程度の労力
APIによる決済ゲートウェイの構成=労力は変動
加盟店は通常、失敗した取引を手動で処理します。ウェブサイト上に取引を再試行するセルフサービス方式の手段がなければ、電話やメールで個別に顧客と連絡をとることになります。
しかしその代わりに、さまざまな決済ゲートウェイのラッパーとしてオーケストレーションレイヤーを設定することができます。詳しくは次のセクションをご覧ください。
さらに詳しく:決済オーケストレーションとは?
オーケストレーションレイヤーを利用するメリット
決済オーケストレーションプラットフォームは、決済ルーティングの自動化に役立つコントロールセンターです。このプラットフォームにはいくつかのメリットがあります。
機械学習は、ユースケースやコスト、パフォーマンス、ロケールに応じて、さまざまなPSPに決済を指示します。
アナリティクスは1つのダッシュボードに統合されているため、データ分析が容易になります。
また、新たに決済プロセッサや支払方法を追加したり、古いものをスワップアウトしたりするのも楽になります。
例えば、競合他社がApple Payを提供していることに気づいた場合、一からコーディングするよりも、オーケストレーションプラットフォームを用いてApple Payを決済に導入するほうがはるかに簡単です。
オーケストレーションレイヤーを利用すべき企業は?
決済オーケストレーションの利用が最適なのは、決済戦略がビジネスの成功のカギであることを把握している大手決済企業です。このテクノロジーを使うと、ペイメントマネージャーは、ルーティングルールを微調整し、費用対効果の高い決済をより迅速かつ効率的に達成することができます。
プロセッサが停止しても耐久力があり、遅い処理速度にも耐性があるスケーラブルな決済システムが必要な企業は、オーケストレーションプラットフォームの利用に最も適しています。オーケストレーション技術には適応性があるため、個々の新たな決済ゲートウェイの統合は、手動よりも柔軟に行うことができます。
取引の処理時間の短縮、支払いの成功率の向上、ビジネスにとって競争力のある価格設定の実現を目指している大手決済企業は、決済オーケストレーションの採用を検討すると良いでしょう。
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